新著「小規模宅地等の特例」が出ます

2023年12月1日に、新著「小規模宅地等の特例 基本と実例でわかる税務」が出ます。
 小規模宅地等の特例は1975年(昭和50年)に創設されて以来、その時々の社会経済情勢に応じて様々な変遷をたどっています。本来、税制改正はその時々の経済情勢や、税制の不都合を解消することで行われます。小規模宅地等の特例は、そのようなこととは一線を画して、不明瞭な改正が行われてきたように感じます。高齢者は独居が叶わず、やむを得ず老人施設に入居することがあります。かつて、取扱いは、税法又は通達ではなく、国税庁タックスアンサーなどで一定の要件を満たした老人ホームであれば適用できる旨公表していました。老人ホームに対する所有権がある場合や終身利用契約の老人ホームでは適用できないなど不安定な取扱いでした。また、建物の一部でも特例適用要件を満たすことができれば、その建物の敷地全体に対して特例が適用できるという取扱いもありました。要するに、適用及びその改正に右往左往している感が非常に強い税制です。
 本特例は、1人でも適用該当者がいると相続税の課税価格が減少し、他の相続人の税額も減少します。平成27年の相続税の改正において基礎控除が4割カットされたことから、相続税の適用件数が飛躍的に増加しています。大半は、課税のボーダーラインにあります。ここで、特例の適用が存在感を増します。自宅に適用するだけで、相続税が非課税となる可能性が高くなるからです。また、財産が高額になる場合でも、自宅の価額が80%も減額できることは、納税額の緩和に大きく寄与します。この特例が適用できるよう居住形態を見直すことも必要です。
 本書は、相続税において重要な取扱いであるが、なかなか理解しにくい小規模宅地等の特例を、平易かつ十分に説明しています。